男子テニス部が全国大会で優勝を果たした。本当、あの部活はすごい。特に、今年は強かったんじゃないかな。やっぱり、手塚先輩や不二先輩といった天才と呼ばれてる人たちの存在が大きいんだろう。・・・来年は、この先輩たちがいないわけだけど、大丈夫なのかな?まぁ、今の1・2年生も強いし、先輩たちも卒業するまでは、部活に来て扱いてくれそうだし、大丈夫だよね。そういえば、次のレギュラーとかって、いつ決めるのかなぁー。
・・・って、何だかテニス部が気になってきた。よし、今日は久々に見に行こう!

そんなわけで、放課後。予定通り、テニスコート周辺にいる私だけど・・・。相変わらず、ギャラリーが多いなぁ。


「あぁ・・・。もう、不二先輩の姿が見れる機会が少なくなっちゃうんだよね・・・。」

「だから!これから、ちゃんと焼き付けないと!!」


3年生のレギュラーの人たちのファンらしき人がたくさんいて、正直言って、コートの様子がわからなかった。・・・やっぱり、レギュラーの人気って、そうじゃない人たちに比べると凄まじいよねぇ。それだけ注目されるんだね。
・・・部活の様子が見れないから、帰ろうとも思ったけど。そういうことを考えると、ちょっと不安な思いも出てきて。部活が終わるまで、図書室で暇つぶしでもすることにした。

私の不安は幼馴染について、だ。レギュラーにはなってほしいと思う。それに、私はなれると思ってる。・・・でも、やっぱり先輩たちのように、モテモテの人気者!みたいにはなってほしくない。そんなのって、何だか寂しいじゃない。

部活が終わる頃、私は図書室を後にして、今は校門前にいる。ここなら、絶対通るもんね。・・・ほら、テニス部の人たちも何人か帰ってきた。そして・・・。


「あ!将くん!!」

「うわ!な、何だよ?!」


私は待っていた人物の姿を見つけると、手を振りながら、大声で呼び、そのまま傍に駆け寄った。


「おぉ、いいねぇ。女を待たせてるとは。」

「つーか、いつから付き合ってたんだよ?」

「そんなんじゃねぇって!お前らも知ってるだろ?!」


その周りには、彼の友達の池田くんや林くんもいた。


「池田くんと林くんも、部活お疲れ様ー。」

「ありがと、。・・・じゃ、俺らは先帰るわ。」

「2人で仲良く〜。」

「だーかーらー!!」


池田くんと林くんはからかいながら、帰って行った。・・・で、このからかわれている人物こそ、私が待っていた人物。私の幼馴染の荒井将史、つまり将くん!


「いいから、将くん、一緒に帰ろう?」

「だって、アイツらが・・・。」

「別に気にすることないでしょ?仲の良い、池田くんと林くんなんだから。本気で言ってるんじゃないって。」

「いや・・・。」

「どっちにしろ、もう池田くんと林くんは帰っちゃったし、私と将くんは帰る方向が同じなんだから。一緒に帰ってもいいでしょ?」

「それは、わかってる。」


少しため息を吐いた将くんは、まだ納得してないみたい。・・・何か、文句でもあるの?


「そんなに私と帰りたくないの?」

「そ、そんなんじゃねぇよ!」

「・・・じゃあ、なんで1回どもったのよ。」

「あぁ、もう・・・!本当違うって・・・。」


将くんは、自分の考えを説明するのがちょっと下手だと思う。まぁ、長い付き合いだから、ちゃんとわかってるし、そんなところも可愛いと思うけどね。


「よかった。嫌だと思われたら、どうしようかと思った。」

「そんなの今更だろう。」

「・・・今更って、どういう意味かな??」

「いや・・・!そういう意味じゃなくて!!」

「そういう意味って・・・??」

「あぁ・・・!!」


本当、将くんは変わんないなぁ。純粋って言うか、素直って言うか。だから、一緒にいてて、とても居心地がいいし、とても楽しい。・・・からかい甲斐もあるし。きっと、池田くんと林くんも、この気持ちはわかってくれると思うね!


「まぁ、私にしても、今更だから、もういいよ。それよりさー、将くんはレギュラーになれそうなの?」

「な、なんだよ。突然・・・。」

「だって、先輩たちは、もう引退しちゃってるんじゃないの?」

「気が早いな・・・。まだ先輩たちはいらっしゃるし、次の大会だってずっと先だぞ?」

「でも、次の大会に、その先輩たちはいないんだから。将くんがレギュラーになって、将くんが部長になるかもしれないじゃない。」

「いや・・・部長はねぇだろ。考えてもみろよ。俺らの学年には、桃城や海堂がいるんだぜ?1年には越前もいるし。」

「年下に負けてもいいの?」

「だって、アイツは別格だろう・・・。本当、アイツはすげぇんだって!」


自分が負けたという悔しさと、同じ学校の奴が強いという誇らしさ。将くんの言葉からは、その両方が感じられた。・・・全く、人がいいと言うか、何と言うか。


「同じ学年の桃城くんや海堂くんにだって、負けていいってわけじゃないと思うけど?」

「アイツら、強ぇもん。・・・って、痛っ!なんで、叩くんだよ、!」


もう、情けない・・・。私がイライラしてきて、将くんの腕を思い切り叩いてやった。
・・・わかってる。将くんだって、何も諦めてるわけじゃないと思う。こうやって仲間の強さを誇りに思えるぐらい、青学を大切に思ってる将くんだもん。きっと、自分自身も強くなりたいと考えているはずだ。で、桃城くんや海堂くんは、同じ学年でも強いから、目標の1つだとか思ってるんだろう。でも、そんなの私が嫌だ。先輩ならまだしも、同い年を目標にするなんて。


「喝を入れてあげたのよ。将くんがしっかりしないと、後輩にも示しがつかないでしょ!」

「別に弱気になってるわけじゃねぇよ。・・・レギュラーにはなってやるよ、絶対に。」


・・・ほらね、やっぱり。私は、満足しかけたけど・・・。それはそれで、問題があるんだった。


「将くんもレギュラーになったら、先輩たちみたいに、モテモテになるのかなー?」

「あのなぁ・・・。俺がそんなタイプに見えるかよ。」

「だって、将くん、カッコイイし、優しいし、本当はしっかりしてるし、頼りになるし、一緒にいてて楽しいし、テニスだって強いし、・・・。普通にモテると思う。」

「お、おぉ・・・。そうか・・・?」

「少なくとも、私はそう思うし、私はそういう将くんが好きだよ?」

「な・・・!!なんで、は、いつもそういうことを軽く言うんだよ・・・!」


将くんは照れながら、そんな風に焦っていた。・・・本当、からかい甲斐がある。
でも、私はいつも、軽い気持ちでは言ってない。本当に、将くんのことが好きで、そう言ってるんだ。


「真剣な話。もちろん、私はレギュラーにならなくても、将くんの良さはわかってるけど。周りの子たちは、それがきっかけで気付く人が多いと思うの。そうなったら、きっと先輩たちみたいに、将くんもモテるようになるよ。・・・だけど、私はそれが嫌なの。私にこんなことを言う資格は無いけど・・・、それでも、寂しいものは寂しいから。」


一応、私は真面目な口調で話した。・・・それは、将くんにも伝わったらしく、少し驚いていた。
・・・あぁ、ここで嘘って言ったら、面白い反応してくれるかなー?なんて思ったりもしたけど、本当に嘘じゃないから、私は黙って、将くんの様子を見ていた。


「・・・。それって・・・告白?」

「そのつもりかな?」

「なんで、疑問系なんだよ・・・?!」


やけに焦る将くんが、あまりに可愛くて、私は思わず笑ってしまった。


・・・、絶対からかってるだろ・・・!!」

「からかってないって。将くんが好きすぎて、笑ったの。」

「訳わかんねぇよ・・・。じゃあ、さっきの疑問系は?!」

「それは、照れ隠しがあるからに決まってるでしょ?それぐらいわかってよ、バカ。」

「バカはお前だ・・・。」

「なんでよー?!」


なんだか、告白というより、喧嘩になってきちゃった・・・。まぁ、私も深刻に愛の告白をするつもりはなかったし。ただ成り行きで、つい好きだって言っちゃっただけ。それに、それを言ったところで、将くんにどうこうしてほしいとかも、特にないから。これからも、こうやって仲良くしてくれれば、それでいいし。喧嘩になっても、別にいいやなんて思っていたら。


「俺がモテたとしても、と離れるわけがねぇだろ?」

「将くん・・・?」

「・・・俺だって・・・、のこと・・・好きなんだから・・・。余計に離れるわけがねぇし。」


こっちを見ずに、そう言った将くんは、本当に恥ずかしそうだった。・・・もう、やっぱり可愛い!!


「私も、大好き!!」

「バカ、!周りに聞かれたら、恥ずかしいだろ?!」


やっぱり照れる将くんが好きすぎて、私は笑った。


「将くんは、これから私の幼馴染であると同時に、彼氏ってことでいいんだよね?」

「・・・そういうことだな。」

「じゃ、手繋いで帰ろっか!」

「ば・・・!そんなこと、できるか・・・!」


私だって、学校の友達にいろいろと言われたら面倒だし、本当は手を繋いで帰らなくてもいいんだ。ただ・・・。


「じゃあ、将くん。手は繋がなくていいけど。明日からは一緒に帰ってくれる?」

「そんなの今更だろ?」

「・・・あ。また、今更って言った!」

「あ!だから、そういう意味じゃなくて・・・!!」

「だから、どういう意味??」

「だから・・・!!」


相変わらず、将くんはこんな感じだけど。私は、そんなところも好きだから。次、レギュラーになれるように、応援してるよ!





ちなみに、次の日。
昨日と同じように、校門前にいた私は、池田くんと林くんと歩いてくる将くんを見つけた。


「将くん、お疲れ!」

、聞いたぜ?ようやく、荒井と付き合ってくれたんだな。」

「あ、池田くんもお疲れ様。うん、そうだよー。」

「本当、俺たち相談とか乗ってたし、2人が付き合ったのは、自分達のことのように嬉しいぜ。」

「ありがとう、林くん。林くんも、お疲れ様。」

「相談なんてした覚えはねぇよ!!2人とも、余計なことを言うな!」

「あぁ、でも、俺たちは邪魔みたいだな・・・。残念だけど、先帰るわ!」

「バイバ〜イ。2人とも、また、明日ー!」


そんな私たちを見て、将くんは1人でため息を吐いていた。本当、将くんってば、可愛いんだから。・・・もちろん、カッコイイところも好きだよ!なんて言えば、また照れるんだろうなぁと思ったら、また愛しくなって、思わず笑っちゃった。


「笑うな・・・!」

「将くんといると、幸せすぎて、笑えてきたんだよ。」

「また、そういうことを・・・!!」


だって、本当に幸せなんだもん。だから、これからも、一緒に楽しく過ごそうね、将くん!













 

初荒井夢です!・・・なぜ、荒井くん?って感じですが(笑)。
今回、「年上の人でも、あだ名で呼べる関係」っていう話を書きたかったんですよ。それで、青学から順番に考えて・・・・・・ですね。その途中で、気付けば「荒井くんって、下の名前は・・・将史やっけ?」と荒井くんのことを考えていたんです。で、確認すると、漢字もちゃんと合っていたので、あらためて、荒井くん好きを認識しまして・・・。
結果、当初の目的を忘れ、荒井くんで同い年幼馴染設定を書くことになりました☆(笑)

荒井くんは好きなんですが、やっぱり口調がわかりませんでしたね・・・。欲張って、池田くんや林くんも出してみましたが、更にわかりませんし・・・;;
本当、捏造ですみません・・・!!でも、私は書いてて、楽しかったです、はい。・・・ごめんなさいorz

('08/05/25)